2026年5月30日
歯科治療にはさまざまな方法がありますが、その中でも「根管治療」は歯を保存するためにとても重要な治療の一つです。根管治療は、歯の中にある神経や血管を含んだ部分(根管)をきれいにして、再感染を防ぐために詰め物をする治療です。しかし、根管治療を行うだけでは、歯を完全に守ることはできません。治療後の根管をしっかりと封じ込めることが、長期的に歯を残すためにはとても重要です。今回は、この根管充填(こんかんじゅうてん)で使われる「MTAセメント」という材料について、わかりやすく説明いたします。

【MTAセメントとは?】
MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate)は、Mineral (ミネラル )Trioxide (三酸化物)Aggregate(集合体)の頭文字をとったもので歯科治療で使用される特殊なセメントです。もともとは工業用のセメントとして作られたものですが、その後、歯科での使用が広まりました。このセメントは、ケイ酸カルシウムなどを成分にしており、非常に強い殺菌効果があり、また水分が多い場所でもしっかりと固まる特徴があります。つまり、お口の中という湿った環境でもきちんと機能するのです。
MTAセメントの大きな特徴は、その封鎖性、細菌に対する効果、生体にやさしいという点です。これらの特徴が、根管治療において非常に有効であるため、近年、注目されている材料となっています。
【主に自費治療で用いる】
MTAセメントは、基本的に自費治療で広く使用されています。自費治療では、より精密な治療が求められることが多く、そのための材料としてMTAセメントが選ばれることがあります。特に、歯をなるべく抜かずに保存したいという患者さんのニーズに応えるために、MTAセメントは非常に有効です。
例えば、従来の根管充填材料では対応しきれなかった、根管の破損や根の先端の感染などの複雑なケースでも、MTAセメントを使用することで治療が成功し、歯を残すことが可能になります。このような場合、保険治療では対応が難しいことがありますが、MTAセメントを使用した自費治療であれば、より効果的な治療が期待できます。
また、自費治療では患者さんの歯の状態や治療に対する希望に応じて、より精密で長持ちする治療を提供することができます。MTAセメントは、その優れた封鎖性、殺菌作用、そして生体適合性によって、歯を長期的に守るために最適な選択肢と言えるでしょう。
【MTAセメントを使った根管充填】
根管治療では、まず歯の中の神経を取り除き、歯の根の部分をきれいに掃除します。その後、空いたスペースに詰め物をするのが「根管充填」という処置です。この根管充填がうまくいかないと、再度細菌が侵入し、治療した歯が感染してしまうことになります。そのため、根管充填に使う材料は、歯の根をしっかりと封じ込め、細菌の侵入を防ぐことが最も重要です。
①封鎖性に優れている
根管充填の材料は、できるだけ歯の内部を完全に封じ込める必要があります。MTAセメントは、固まるときに膨張する性質があり、歯としっかりと密着します。そのため、他の材料に比べて非常に高い封鎖性を持っており、細菌が根管内に入り込むのを防ぐことができます。
従来の「ガッタパーチャ」という材料は、天然ゴムを原料にしたものですが、この材料は歯と完全にくっつくわけではなく、シーラー(接着剤)を使わなければなりません。しかし、このシーラーは固まると収縮してしまうため、歯との隙間ができてしまいます。MTAセメントはそのような隙間を作らないため、より確実に根管を封じ込めることができます。
②殺菌作用が高い
MTAセメントの大きな特徴の一つは、非常に強い殺菌効果を持っていることです。MTAセメントは、強いアルカリ性(pH12.5)を持っており、このアルカリ性が細菌の繁殖を抑える働きをします。根管治療では、できる限り根管内を無菌状態に保ちますが、完全な無菌状態を作ることは非常に難しいものです。ですが、MTAセメントは残った細菌に対しても強い殺菌作用を発揮し、再感染のリスクを減らします。
これに対して、ガッタパーチャにはこのような殺菌作用はないため、MTAセメントを使用することで、より再感染を防ぎやすくなります。
③硬化すると強度が高くなる
MTAセメントは、硬化すると非常に硬くなり、強度が高くなるため、根管充填後の歯をしっかりと支えることができます。従来のガッタパーチャは柔らかく、時間が経つと強度が弱くなることがありますが、MTAセメントは固まった後もその強度を長期間維持できます。
④生体適合性が良い
MTAセメントは、生体にやさしい性質を持っているため、体内に入っても炎症を引き起こすことなく、良好な治癒を促します。これは、MTAセメントが体に馴染みやすいためです。もしMTAセメントが根管の外に漏れ出しても、体はそれを異物として拒絶することなく、炎症を引き起こすことなく受け入れます。
また、MTAセメントは歯に似た硬組織を作り出す作用があることがわかっています。これにより、難しい症例でも歯を保存する可能性が高くなるのです。例えば、歯に穴が空いてしまったり、根の先が破壊された場合でも、MTAセメントを使うことで歯を保存することができるかもしれません。
⑤親水性が高い
MTAセメントは水分と良くなじむ性質を持っており、根管内の湿った環境でも問題なく使用できます。歯の内部は水分が多いため、従来の材料では時間が経つにつれて封鎖性が劣化することがありました。しかし、MTAセメントは水分を吸収してもその性能を維持できるため、長期間にわたって安定した封鎖性を提供します。
【MTAセメントが有効な症例】
MTAセメントは、難しい根管治療において非常に効果的です。特に、従来の治療方法では歯を保存することが難しかったケースでも、MTAセメントを使用することで歯を残す可能性があります。
例えば、以下のような症例において、MTAセメントは非常に有効です。
・根管に穴が空いてしまった場合(パーフォレーション)
・根の先が破壊された場合
・歯の根に深い感染がある場合
これらの症例でも、MTAセメントを使用することで、歯を保存できる可能性があります。もし他の歯科医院で「抜歯をしましょう」と言われた場合でも、MTAセメントを使うことで歯を残せる可能性があるかもしれません。
【治療後のケア】
MTAセメントを使った治療後は、通常通りの治療が進められます。根管充填後には、歯の形を整えて被せ物をします。この被せ物がしっかりと取り付けられれば、歯は長期間機能します。また、治療後の歯を長持ちさせるためには、定期的なチェックアップを受けることが大切です。もし治療後に異常を感じた場合は、早めに歯科医院で相談することをおすすめします。

【OCEAN歯科からのメッセージ】
根管治療は、歯を保存するために非常に重要な治療です。MTAセメントは、その優れた封鎖性や細菌抑制効果、生体適合性により、根管治療の成功率を高めるために非常に有効な材料です。もし、他の医院で抜歯を勧められた歯でも、MTAセメントを使うことで歯を残せる可能性があるかもしれません。まずはお気軽にご相談ください。
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